「ジヴェルニーの食卓」原田マハ

ロンドンに引っ越して以来、通勤時間も減って時間に余裕ができつつあるので読書量を増やそうと努めています。

というわけで、読んだ本の中でヨーロッパに関係するものを紹介しようシリーズです。
最近読んだ中でも特に面白かったなーと思った本がこちら。

「ジヴェルニーの食卓」

ジヴェルニーの食卓 (集英社文庫)

ジヴェルニーの食卓 (集英社文庫)

 

 

 原田マハさんの本を読むのは初めてだったのですが、なんと読了感の爽やかなこと。

この本はマティスドガセザンヌ、モネの4人の画家の生活を第三者の視点から綴った手記のようなお話しです。マティスに師事した家政婦が語る彼との出会い、ドガが「14歳の小さな踊り子」を製作する過程を目撃した女流画家による告白、セザンヌに手紙を送り続けるタンギー爺さんの孫娘、モネに憧れに憧れた義理娘の彼との思い出。全てがリアルで、まるで自分も画家たちと共に同じ時を過ごしているかのような錯覚を覚えます。松任谷由実さんが帯でコメントをされていましたが、まさに「画家たちの息づかい」をリアルに感じる物語。

1年ほど前から西洋美術にもっと詳しくなりたいと思いつつ絵画の解説本をちょくちょく読んでますが、こういう画家の生活を描いた本を読んだ後で彼らの作品を見てみると、またどこか違った印象を受けます。特にモネの生涯を綴った「ジヴェルニーの食卓」の章は、いかにモネが光を求め青空の下で筆をとりつづけていたか、どのような状況であの大作、連作《睡蓮》が描かれオランジュリー美術館へと運ばれたのか、晩年の白内障との戦いがいかなるものだったのかなど、画家の人間性というものに触れることができて、作品自体にモネの意思や人間性を今までより少し感じることができるようになった気もします。(もっとも、これらの話自体は膨大な資料を元にしたフィクションではありますが。)

このように画家を題材にして物語を書くのはとても面白い試みだなと思うので、原田さんには是非続編にもトライして欲しいところ。個人的にはムンクの物語が読みたい。


ちなみにKindleで販売されている電子特別版には、文庫版にはなかった絵画も掲載されているようです。自分はGoogleで作品を検索しながら読んでましたが、Kindle持ってる人はこっちで読むほうが楽しめるかもですね。

 読書の秋に非常におすすめの1冊です。