ヨーロッパ人のワーキングスタイル

f:id:kamaboko_eu:20170804033822j:image

 

日本にいた時から、ヨーロッパの仕事のやり方は日本とは全然違うと聞いていた。残業し過ぎて休みも取らない日本人に対して、ヨーロッパ人はワークライフバランスを重視するから残業もしないし、休みも多い、といった具合だ。こちらに来て以来印象ががらっと変わったということはなく、基本的な部分では日本人の想像するステレオタイプなヨーロッパ人が多いのだろうなという印象を持っている。

 

ただ、実際に生でヨーロッパの人たちを観察していると色々なことに気づく。例えば、次のような点だ。

 

1. よく働くマネージャーたち

 

典型的な日本の職場だと、一般社員が猛烈に働いて、管理職の人たちは夜遅くならないうちに帰るパターンが多いと思う。(もちろん、職場次第ではある。) ヨーロッパの場合は逆で、職位が上の人ほどよく働く。例えばオランダで経験した職場だと、一番下のポジションの人は常に定時で帰宅する人が多く、会社に入りたての人をのぞいては仕事への意欲もあまり高くない人たちが多かった。

 

ところがその人たちを管理するチームリーダーたちは、仕事への情熱がある人が多く、忙しい時は夜遅くまで残業することを厭わなかった。(ちなみにチームリーダーの中にも将来を期待されている若者と、行き場なくリーダーをしてる中年社員がいて、この辺りはどこの国でも同じだと思った。)

 

そしてその上のマネージャー、ダイレクターになると、チームリーダークラスよりも更に働くようになる。私の上司であったドイツ人のマネージャーは常に私より帰宅するのが遅かったし、ダイレクターも1日中働いているのではと思うくらいで深夜にメールが来ることもあった。こんな感じで私の印象は職位があがるほど働く人が多いという風だが、もちろんこれは個人差のあることだし、ひとくくりに語るのは良くないと思う。ただ、日本と比べてこの傾向は強いのではないかと思うのである。

 

2. バカンスは文化

 

これは明らかに日本と異なった文化だと感じるのだけれど、ほとんどのヨーロッパ人は年に1、2回は長期休暇を取る。日本でもお盆と年末年始に1週間程度休みを取る人は多いと思うが、ヨーロッパ基準の長期休暇は2〜3週間だ。特にオランダ人の場合はほとんどの人が夏に3週間の休みを取っていた。スペインも同様に8月に3週間ほど休みを取る文化があり、フランスなんかでは夏に3週間、冬のスキー休暇で1、2週間、イースターに2週間と年がら年中バカンスのような人たちもいた。日本だと暗黙の了解のように誰も取りたがらない長期休暇だが、ヨーロッパでは本当に一般的で、誰もそれに難色を示したりしない。それが社会として受け入れられた上でビジネスが成り立っているのだ。

 

なのでヨーロッパで業績管理の仕事をしていると、どこの国も決まって8月の業績が良くない。理由はと聞くと決まって「夏休みの影響」との答えが返ってきて、経営陣も特にそれに対してはツッコミはしない。スペイン人のCOOも毎年自ら8月に3週間の休みを取っているし、日本のような休むことが気まずい雰囲気は皆無である。これは日本が見習わなければいけない点だと個人的に強く思っている。

 

ただ、イギリスでは3週間も休みを取るのはあまり一般的ではないようで、だいたい1〜2週くらいの人が多いようだ。CEOのイギリス人はいつも休暇はだいたい1週間だし、イギリス人のPAは3週間休んでる人を見て、「いいなぁ、3週間も休日なんて…」というコメントも残していた。同じヨーロッパとは言え、島国と大陸の文化の違い、というのはあるのかもしれない。

 

3. 祝日の少ないヨーロッパ

 

ワーキングスタイルとは少し違った切り口になるが、ヨーロッパの国は祝日(Bank Holidayと呼ばれる)が非常に少ない。日本のように毎月何らかの祝日があるのはヨーロッパ人にとって驚きのようで、同僚に明日は日本の祝日だからと説明する際に「また祝日か!日本人休み過ぎ!」と言われることが多かった。確かに住んでいたオランダとイギリスの祝日は、元旦に1日、国王の日に1日(オランダのみ)、イースターに3、4日、5月〜6月に1、2回、8月に1日(イギリスのみ)、あとはクリスマスに3連休あるだけだ。日本のようにゴールデンウィークやお盆休みはないし、年末年始も元旦を除いは稼働している。その代わり有給を使ってバカンスなり、Long Weekendを取るのだ。日本人は休まずに働くことで有名だけども、祝日を入れるとヨーロッパの人たちとも稼働日は思っているほど大きく変わらないかもしれない。

 

日本人駐在員もうちの会社の場合は現地の暦に合わせて働いていて、夏休みや冬休みは自分で有給をつなげてとっている。自由に有給を取れる環境は非常に楽で、休日をピーク時とずらせば混雑を避けることも出来るし、誰かはオフィスにいるから仕事で何かあっても誰かにフォローしてもらうことが出来る。こっちのスタイルの方がずっと効率的だと思うのだけれども、なぜ日本でこのような文化が浸透しないのか本当に謎である。

 

4. カジュアルなコミュニケーション

 

これも環境によって差はあると思うけども、日本と比べて同僚とのコミュニケーションがカジュアルに感じる場合が多い。カジュアルというか、浅く広くコミュニケーションが取られているように感じる。

 

どういうことかというと、日本での社内での人付き合いは「せまく深く」になる場合が多いと思う。私が日本で働いていた時は、同じ部署の人とはそれなりに仲良くなって飲みに行ったりプライベートな話をすることが多かったけど、他部署の人とは個人的に仲がいい場合を除いてオフィスですれ違っても会釈程度で済ませることが多かった。

 

ところが、ヨーロッパに来て以来、1度打ち合わせで顔を合わせただけの人でもオフィスで見かけると笑顔で挨拶して、「How are you?」と聞いたり聞かれたりすることが多くなった。ヨーロッパのオフィスはだいたいコーヒーマシーンが設置されてて、そこで色んな人と顔を合わせることになるのだけど、だいたいコーヒーを入れながらちょっとした会話を楽しむことが多い。今日の天気とか、休日の計画とか、休みどうだったとか、本当にたわいのない話を数分だけ行う。日本の喫煙室みたいなイメージだろうか。(私はタバコを吸わないので分からない) 本当に意味のない会話しかしないけれど、私はこれが結構好きだったりする。なんとなーく相手の人となりを知って、相手に自分のことも知ってもらって、次のコミュニケーションがしやすくなるのだ。そして役職の上下関係なくこのようなカジュアルなコミュニケーションが取られているのが日本と違うなあと感じる。

 

逆に、日本のように仕事終わりにみんなで飲みに行く機会はオランダでもイギリスでも日本にいた頃より圧倒的に少なくなった。日本人だからかなとも思ったけど、仕事が終わるとぱっと帰って家族との時間を過ごしたり、職場以外の友人と出かけたりしている人が多いようだ。その意味では少しドライで、よく言われるように仕事の同僚とプライベートの友人はまた別なのかもしれない。ただ、イギリスの場合はパブ文化があるので、仕事帰りにふらっと一杯みたいなのは割と多くの人がやっているようだ。(私はお酒を飲まないのでよく分からないが) 個人差だけではなく、国や地域によっても色々事情が異なるのかもしれない。

 

関連して少し面白かったのが、オランダで働いている時は「飲み」と「食事」が完全に別のものとして扱われていたことだ。日本人の場合飲み会は食事込みで飲み会なので、最初にこちらのDrinkingに参加した際はみなスナック類しか注文しなくて驚いたのを今でもよく覚えている。そのためお酒の飲めない私は日本のようにせめて食事だけ楽しむということも出来ず、飲みの際はただただコーラを飲み続け、帰ってから夕食をとるという悲しいことを続けていたのである。

 

 

とりあえず4点あげてみたけど、日々ヨーロッパ人と仕事をしていて、ふとした瞬間日本とは違うなと思うことはたくさんある。またの機会に他のことについても書いてみようと思う。