駐在員の存在価値について

気がつけば今月末でオランダで働き始めて9ヶ月が経ちます。あと3ヶ月で1年。時の流れの何と早いことでしょうか。目標にしていた海外駐在を実現することが出来たわけですが、毎日を噛み締めながら生活しないとほんとあっという間に駐在期間が終わってしまう気がしています。

 

「海外で働く」ということに憧れを抱く若者が(少なくとも身の周りでは)どんどん増えてきている昨今。

 

憧れの理由は人によって様々で、英語が好きなので英語を使って仕事をしたい人、日本という枠の中でなく異文化の中で多国籍の同僚と仕事がしたいと考えている人、とにかく日本の職場から離れたい人、外国人の友達をたくさん作りたい人、などなど想いは多岐に渡ると思います。自分の場合は「自社の現場の仕事をもっと深く知りたい」「語学面、スキル面で外国人の中にいても力を発揮出来るようになりたい」という2点が主な動機でしたが、常に意識していないと日々の業務でそういった目的意識も薄らいでしまいそうになります。

 

そのような想いとは裏腹に、自分がここに赴任してから9ヶ月感で一番強く感じたことは、海外で働く喜びというよりは「駐在員としての責任」であり、日々の仕事にその責任感が非常に重くのしかかってくるということです。具体的には、以下の3点からくる責任感です。

 

 

  • 駐在員はお金がかかる

 

 

  • 日本からの期待は意外に大きい

 

 

  • 何より仕事の難易度が高い

 

 

まずお金について。どこの会社でも駐在員にかける予算は年々削られてきているとは思いますが、それでも1人当たりにかかる費用は日本のスタッフと比べてかなりのお値段になるはずです。ましてやローカルスタッフと比べると、手取りも家賃補助も段違いの価格でしょう。(マネージャー以上は別ですが。)

 

それだけお金がかかっているということは、それだけ成果が求められているということです。実際自分もこちらへ赴任して給料がかなり増えましたが、逆にそれがしっかりと働かなくてはならないという意識付けにもなります。

 

また、報酬面だけではなく、実際のところ駐在員に対する日本、あるいは海外で働く他の日本人スタッフからの期待は意外と大きく、日本人からの問い合わせは半端なく多いです。ありとあらゆる質問がありとあらゆる部署から降ってくるわけで、自分はこの会社の欧州SCM区の窓口なのだということを実感せざるを得ません。

 

そして最後に仕事の難しさですが、やはり日本の仕事とは全く違った難しさを感じます。何より自分が一番難易度が高くプレッシャーである(そしてチャレンジングでやりがいがある)と感じるのが、日本の考える方針や活動を上手く現地の需要とマッチングさせて現地メンバーに理解してもらい、それをプロジェクトとして推進していくこと、そして現地の業務プロセスにおける問題を発見して、ローカルスタッフと一緒にどんどん改善を行っていくことです。

 

正直、ローカルスタッフはあれこれ口出ししてくる本社や日本人のことを必ずしも歓迎しているわけではありません。「なんでそんなことに口出しされないといけないんだ。」「そんなことをやる意味がどこにあるのか、自分たちはこういうやり方でやっている。」と言われることは頻繁にあり、駐在員としては本当にやるべきことは何なのかを日本と現地の間の立場で冷静に考え、ベストな折衷案を考えなければいけません。ある時はちょうど中間のようなアイデアを考えますし、時にはローカルスタッフを説き伏せる、あるいは日本にそれは違うと強くメッセージを送らなければいけません。自分はこういった事に関するコミュニケーションスキルをまだまだ磨いていかなければいけない段階です。本当に頑張らなければ。。

 

冒頭に記したように、ニュースで最近の若者は安定志向という記事が出回る一方で、自分の周りを見てみると「海外で働く」ことに憧れを持つ若い人たちは多く、同年代でもたくさんいますし、後輩にもたくさんいます。ただ、「海外で働く」ということに漠然とした憧れを抱くのは良いことだと思うのですが、一体どれだけの若者がこういった責任を理解しているかというと、あまりこういったことは考慮されていないのではないかとも感じます。自分も含め、目的意識としては「自分の成長のために」海外で働きたいという人が多いと思います。でも実際は、現地の会社に就職するケースは別にして、日本の企業から派遣してもらうつもりであれば、あくまで「会社の代表として海外で働いている」のだということを念頭におかなければいけません。

 

駐在員と一口に言っても色んな人がいて、熱心にアウトプットを出そうと全力を尽くす人もいれば、最低限のことだけをこなしてプライベートを楽しむことに集中する人もいます。また、部署によってはローカルスタッフでも出来るような通常業務にしかアサインされていない駐在員も存在します。しかしながら、やはり駐在員の価値というのは日本人でしかできないことを現地で行いアウトプットを出すことであり、ローカルスタッフで代替出来るような仕事のやり方をしていてはいけないと強く感じるのです。

 

今、自分が駐在員の存在価値を満たしているかと問われると、とてもじゃありませんが「Yes」とは言えません。駐在期間を終了する時に、「自分はヨーロッパで自分にしか出来ないこういうアウトプットを築きました。」と胸を張って言えるように頑張るのが今の一番の目標です。問い合わせ対応だけに忙殺されがちなので、そろそろきちんとタイムマネジメントをして成果を出していかなければいけません。

 

「海外で働きたい」若者の話に戻ると、海外赴任を目指すにあたってはこういった現実をしっかり認識しておく必要があります。純粋に自分の力試しをしたいのであれば、やはり現地採用を目指すべきでしょう。駐在員の仕事と現地採用スタッフの仕事は異なるというのが自分の見解です。何故か「海外で働きたい」という割に海外で就職先を探さずに日本の会社で海外を目指す人たちが自分の会社にも多いですが、学生の留学とは全く違うということは肝に銘じておくべきだと思います。

 

 

 

ということで、駐在員の存在価値と海外赴任を目指すにあたっての心構えのようなものをまとめてみました。そんじゃあね。