西洋絵画が好きになった話

ヨーロッパに来てから、西洋絵画が好きになった。

 

小さい頃から絵を描くことは好きだったけど、西洋絵画なんて歴史の教科書の文化史コーナーに載っている、テストで覚えるのが面倒くさい情報の1つにしか過ぎなかったので、芸術ではなく記号的に覚える対象としてしか見ていなかった。それは大学生になっても一緒で、バリバリの文系学部だったので西洋美術史の授業もあったけど、履修だけして授業はきちんと聞いていなかった。テストでボッティチェリヴィーナスの誕生について批評せよという問題が出て、絵を見ながらとりあえず一見して分かる特徴的なことを一生懸命並び立てた記憶だけ残っている。

 

そんな私の絵画に対する見方が変わり始めたのはヨーロッパに来てからで、きっかけはオーストリアの美術史美術館を訪れたときだったように思う。訪問したのは2013年だったのだが、まずはその圧倒的に豪華な内装にいたく感動した。ヨーロッパの美術館というのはこんなにも美しいのかと、私の中の美術館=淡白なところというイメージがひっくり返った瞬間であった。

内装4

 

そして更に私がそこで目を引かれたのは、ブリューゲルの絵画だ。ミニチュアのような農民たちが躍動的に描かれているのは当時の人たちの生活を彷彿とさせ、きめ細かに描かれたバベルの塔は圧巻の一言だった。絵画って真剣に見るとなかなか面白いな、と感じたのがこの旅だった。

 

子どもの遊び

雪中の狩人

バベルの塔

 

 次に絵画の力を思い知ったのは、ノルウェーへ旅をしたときのことだ。普通ノルウェーと西洋絵画はあまり結びつかないと思うが、「叫び」で有名なエドワード・ムンクノルウェーの出身であり、オスロにはムンク美術館を始め、ムンクの作品がたくさん展示されている。当時はムンクの作品は「叫び」しか知らなかったし、思い入れも何もなかったのだが、ふらっと立ち寄ったオスロ国立美術館にてムンク生誕150周年の特別企画展がやっていたので、そこで初めて「叫び」以外の作品も見ることになった。そして、引き込まれた。

 

「生命のフリーズ」と言う名前が付けられた一連の連作。作品が並べられたエリアに入った瞬間、私はその空間で釘に打ち付けられたように停止し、絵から目が離せなくなってしまった。なんとも暗く、重厚で混沌とした作品たち。しかしそこにはムンクが捉えた生命が確かに存在していて、朧げな光を放っている、そんな風に感じた。特に私の心を捉えたのが「生命の踊り」という名の絵だ。

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* 現地で写真を撮ってなかったので、作品解説のURLを添付

 

なんとも重々しい雰囲気で、ダンスをする人々からは生気を感じないのに、絵画全体から魂の力のようなものが発せられている。そう感じた。解説を読むといろいろな意味が絵画に込められていることが分かるのだが、私は直感的に絵を見るタイプで、溶け合うように密着する男女の表現、ゆっくりと海に滲み出す月光にゾクゾクするような感覚を得た。ああ、ムンクという人には世界がこういう風に見えていて、生命は不安定でかつ揺るぎないものなのだなあと。(ボキャブラリーが少なく、うまく表現できないのが残念である。)

 

この絵だけでなく、生命のフリーズの連作は本当に作者の魂や生命の儚さを感じるので、機会があればぜひ他の人にも見てもらいたい。そしてこのような作品を生み出した背景にはムンク自身の生い立ちが密接に関係しているのだが、また機会があれば自分が今までに得た知識をまとめて書いてみたいなと思う。

 

そして、「ああ、絵画って本当にすごいものなんだな」と心の底から感動し、ある意味叩きのめされたのがイタリアでローマとフィレンツェに行った時なのだけど、長くなりそうなのでこの話もまた今度にとっておくことにする。

 

かくして私はヨーロッパに来て以来、西洋絵画が好きになった。まだまだ知らないことがたくさんあるけど、継続的に、マイペースで学んでいきたいなと思う。